天才は容赦ない ~舞姫 テレプシコーラ~
2008年 09月 07日
Book Offに通いづめ(恥)。。
そんな中、衝撃的だったのが、山岸涼子作の
舞姫 テレプシコーラ。
1部の何巻かは105円で買いましたが、続きが読みたくて、あちこちのBook Offを探し歩き、
結局中野のまんだらけという漫画オタクの店で1部の残り全部を揃えました(とんだ出費。。とほほ。。)
1部の1-10巻を読み終えて思ったのは、『天才は、容赦がないなあ。。』。
山岸涼子先生と言えば、とーーーーーーい昔にアラベスクがありました。
ミロノフ先生に憧れたわ。。繰り返し、読んだ漫画です。
安サラリーマンの家庭で育った私には、バレエなぞ、宇宙の果てのように遠い出来事。
お金持ちのお嬢さんたちの世界のことで、同級生にもバレエなんて習っている子はいなかったなあ。。
正直言いますと、山岸涼子先生、好きな漫画家ではなかったです。
何故かと言えば、漫画に
血の感触がする
すえた匂いがする
狂気と言いましょうか、
生理的に嫌悪感を感じるシーンがありまして、それが怖かったです。
多分、そういう雰囲気が好きな人もいるんでしょうが。。
アラベスクとは世代が違い、なんと小学生の姉妹(千花ちゃんと六花ちゃん)が主人公です。
どういうこっちゃ?と思いながら読みましたが、
止まらなくなる勢いにさせるのは、さすがベテラン漫画家です。
小学生が主人公なのに、
バレエの夢を打ち壊す
(先週バレエのクラスで、ジュッテの時に、床を踏抜く程の音を立て、先生に同じことを言われましたが、次元が違います 汗)、
悪い夢のような、残酷で嫌悪感200%のシーンが出てきます。(やっぱり、出た。。汗)
精神的に病んでいる、貧しい家庭で育った空美ちゃん(脇役)は、
『それでもバレエを踊りたいのか?』と訊いてみたくなる過酷な現実に生きています。
どうやって、正気を保っているのか不思議なほどです。
それに対し、母親がバレエの先生、
経済的にも家庭的にも恵まれた主人公の姉妹は、美しくのびやかに成長しています。
そのコントラストは、あまりにもリアルです。
が、こちらの姉妹にも、悲劇が起こるのです。。
最後の10巻を読んだ時、不覚にも涙が止まらなくなりました。
『ここまでしなくても、エエんじゃないの?』と、作者にモノ申したくなるほどです。
考えてみれば、作者の山岸涼子先生は、10巻に至るために、
伏線として、1-9巻までを描いたのです。
凡庸な作家には、到達しない域で。
トゥオネラの白鳥のシーンの美しさ。
私がイチバン涙が止まらなくなるのが、このシーンです。
バレエとは、現実離れした天界を目指すもの。
爪先で立つトウシューズは、この世からもっと高みを望むために作られたものです。
バレリーナは、究極、トゥオネラ(この世とあの世の境)で踊る白鳥なのかもしれません。
正直この漫画、かなり重いです(汗)。
脇役の空美(くみ)ちゃんの存在からして相当ですが、
他にも、バレエの美を追求するにあたって、
あまりにもシビアな現実を目の当たりにします。
大人になってから、
バレエを習った私には想像もつかない現実です。
(バレリーナを目指してないし。。)
トウシューズで立つバレリーナには、
血豆で傷んだ足、
死んでしまう爪など、
その華やかさからは程遠い
痛みや苦しみがあります。(トウシューズは履いたことがあります)
バレエの美しさと対局する
残酷さ
痛み
哀しみ
これほどまでに
描ききった山岸涼子先生、
手加減してませんね。
第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞を
受賞されたのも納得できる作品です。
第2部が始まっていますが、
第1部の最初だけで消えてしまった空美ちゃんが
どのように再登場するのか(もう登場中?)、
楽しみでもあります。